あっぱれEVプロジェクト 「Meguru」(めぐる)

日本各地で小型EVの研究開発が起こっています。大阪府守口市の町工場「淀川製作所」など4社が製作した「あっぱれEVプロジェクト」のEV「Meguru」(めぐる / 環)もその1つです。3月2日に産業創造館(産創館)で開催された、「ものづくり技術展示会」において、「Meguru」の展示、および淀川製作所の小倉 庸敬社長の講演が行われました。

Meguruの前に立つ淀川製作所 小倉 庸敬社長(右)と九創設計室 後藤 美香代表(左)
 

― 大手家電メーカーの下請けから自社ブランドを造るメーカーに ―

 
大阪府守口市の株式会社淀川製作所は従業員16人の金属加工業の町工場。
守口市や門真市は、パナソニック(旧松下電器産業)や三洋電機といった大手電機メーカーの本社を抱える企業城下町です。淀川製作所は、1961年(昭36年)創業で、主にそういった大手家電メーカーの下請けとして、発展してきました。かつては周辺も町工場が多く、活気の絶えない状態でしたが、2008年9月アメリカで起こったリーマン・ショック以降、これらの町工場も大きな打撃を受けました。 
 
これからは大手から発注を待っている時代ではない。ただ造っているのでは価格面でアジアに負ける。仕事が無ければ自分で創らなあかん。そうして小倉社長の自社ブランドを造るという思いは大きくなっていきました。 
 
EV開発のきっかけとなったのは、2009年3月に参加したある勉強会。
京都EV開発株式会社の岡田 実さんの講演で聴いた『ガソリン車に比べて部品が少なく、その気になれば町工場でもできる』という言葉、また富山県の元は看板屋の町工場「タケオカ自動車工芸」のEV製作事例等を知り、触発されました。 
 
大阪府東大阪市の町工場は人工衛星「まいど一号」を作った。それじゃあ北大阪は「あっぱれ」でどうやろ、ということで「あっぱれEVプロジェクト」が誕生しました。アジアの安さと一流企業の資金力に対抗するにはデザインしかない。女性がカワイイというような斬新なものということで、知人の九創設計室(兵庫県尼崎市) 代表の後藤 美香さんに依頼。電装製作は京都EV開発株式会社(京都府城陽市)、近畿刃物工業株式会社(守口市)に車体部品製作を依頼。大阪府商工労働部 商工振興室大阪府地場産業等総合活性化補助金に2009年9月申請、10月に承認されました。
 
 

 
 

― 地場産業の活性化を目指すデザイン・構想 ―

 
EVの第1号の試作車は環境の「環」で「Meguru」(めぐる)と名付けられました。
「メイド・イン・日本(ニッポン)の誇りを創る」「純和風で関西の観光地を走る、環境に優しい観光タクシー」、そのようなコンセプトでデザインされました。牛車をイメージした三輪スタイル。番傘をイメージしたボディデザイン。関西名産の竹や漆塗りを使用されました。
 
製作は困難を極めました。設計図は無く、あるのはデザインだけ。地元の町工場の仲間たちに支えられ、数多くの失敗を繰り返し、補助金の締切りに追われながら2010年3月、完成に至りました。
 

 
 

床面は燻し竹。竹・籐は京都の東洋竹工株式会社が担当。
ドアは直径1.4mの巨大な扇子。扇子は京都の株式会社風香扇が担当
神社の鳥居のような朱色で総漆張りのボディ。漆塗り塗装は京都の株式会佐藤喜代松商会社が担当。

 

シートの花柄の向きまで揃っている。内装は守口市の川口自動車株式会社が担当。
屋根の内側は和紙。室内上部にはLED照明が6つあり、暗い場所で点灯すると外から行燈のように見える。
 
 
ハンドルは牛車をイメージし、籐を巻いている。
バッテリーはリチウムイオン電池。約1時間半の充電で航続距離は約40km。最高速度は40km/h。

 

― 数多くの取材、注文依頼、講演依頼 ―

 
2010年3月18日京都府城陽市での走行テストでは、何台もの報道のテレビカメラが待ち構えていました。走行テストは成功、これまでの苦労がいっぺんに吹き飛ぶような感動でした。
 
4月5日守口門真商工会議所での完成披露会、その日のうちに、大阪府のマイドーム大阪とクリエイション・コア東大阪での式典参加。以降、多くの取材や展示、講演依頼が殺到しました。
2011年1月19日からの3日間、東京ビッグサイトで開催されたEV JAPANでは、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、共同通信、CNNやロイター通信など海外メディアにも大きく取り上げられました。
 
今回のEV試作で終わったら単なる花火。マスコミで有名になっただけで、おっさんの道楽やと言われるだけ。今後、ビジネスとして成り立たせなければならない。観光協会などからのオファーも多くいただいています。試作車は人件費を抜いて部品だけで約230万円かかりました。今後、4月から量産型の100万円車の実受注に向けて奮闘しています。
 
 
               
 
Meguruは世界最大の英文ビジネス誌「Fortune」や多くの新聞、雑誌などにも取り上げられました。2010年12月には「あっぱれEVプロジェクト」が大阪商工会議所「大阪活力グランプリ2010」のグランプリを受賞。2011年1月にには淀川製作所のリーダー、山本孝次さんが大阪府シートメタル工業会「優良精励従業員」受賞。3月22日には「あっぱれEVプロジェクト」に守口門真商工会議所から感謝状が贈呈されました。 
 
あっぱれEVプロジェクトのMeguru開発ドタバタ奮闘記をまとめた『町工場のおやじ、電気自動車に挑む 「あっぱれ!EVプロジェクト」 淀川製作所開発奮闘記』 淀川製作所代表取締役 小倉 庸敬著 (組立通信)は好評発売中です。
 

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